味噌カツを徹底解剖!

■「矢場とん」のみそかつ

味噌カツはゲテモノではなく伝統を活かした堂々たる郷土料理

みそかつ 名古屋ご当地グルメの代表格のひとつ「味噌カツ」。
トンカツ+味噌、という普通なら"ありえね〜"マッチングが、名古屋圏以外の人に強烈なインパクトを与える。
だが、奇をてらった珍メニューと思われがちだが、名古屋の食文化のキモである豆味噌を最大限に活かした、郷土料理の王道とも言うべき一品なのである。

 この味噌カツの代名詞的存在が、名古屋市大須に本店を構える「矢場とん」。
昭和22年創業の老舗にして、近年は支店を次々と出店。今や他の追随を許さない味噌カツ・グルメのNo.1ブランドである。(矢場とんでのメニュー名は「味噌カツ」ではなく「みそかつ」)
その人気ぶり、そして魅力をナマ体験するため、あえてピーク時を狙って食べに行くことに。(詳細は下記レポートにて)

「矢場とん」レポート 2006.5月某日

13:00様子 13:00
訪れたのは「矢場とん本店」。調査日は5月某日(日)。11時の開店前から並んでいるお客さんもいた。写真はピークの午後1時。

13:02の様子 13:02
「一番混雑する」と聞いていた午後1時に行列に加わる。表通りから裏通りにまで伸びている行列の人数はぴったり30人。

13:05の様子 13:05
店の壁にていねいにも「こちらで待ち時間30分程です」「25分程です」と標識が貼ってある。取材班が並んだ位置は「25分」のやや後方。

13:20の様子 13:20
列は意外とスムーズに進み、ジャスト20分で席へ通された。休日ということもあってか、お客さんは20〜30代の男女ペアが目立った。

13:25の様子 13:25
人気の「わらじとんかつ定食」1575円、「鉄板とんかつ定食」1680円を注文。ほとんどのお客さんが味噌を選択するが、実はソースも選べる。

13:35の様子 13:35
インパクトの強い味のため、最初は濃厚な印象を受けるが、食べ進むうちにクセになって止まらなくなる。これぞ八丁味噌マジック!

■老舗グルメのブランド力の構築は、21世紀以降の積極ビジネス展開から

矢場とんの今日の繁盛ぶりを語る上で見逃せないのは、多店舗展開の成功である。確かに、矢場とんはかねてより名古屋の味噌カツの代表店であり、人気店だった。だが、ほんの5〜6年前までは、並ばなければ入れない、というほどではなかった。

 2001年以降の多店舗化によって、知名度が高まり、人気もグングン右肩上がりになっていったのだ。とんかつ店という業態は個人ビジネスの店が大半。名古屋では、とんかつ店の大半が味噌カツを出しているが、チェーン・ビジネスを果たしている店はほとんどない。矢場とんは、同業者に先駆けて積極的な姉妹店出店に乗り出し、かねてよりのNo.1ブランドの地位を揺るぎないものにした。

 しかも、あらためてふり返ると、立地選定がなかなかツボを得ている。01年の名駅「エスカ地下街」を皮切りに、02年、三重県のアウトレットモール「ジャズドリーム長島」、04年の東京銀座、05年の「ラシック」(三越系のファッションビル)。地元での人気は既に確固たるものだったため、その次のステップとして、名古屋以外からの来客が数多く見込まれる場所に次々と出店。他エリアへ向けて着々と知名度アップを図っていったのである。

 同時に、矢場とんでは、多店舗ビジネスによるスケールメリットを活かして材料の品質向上=味のレベルアップにも取り組んできた。この努力によって、新規客をどんどん取り込みつつ、地元のヘビーユーザーのハートをがっちりワシ掴み。その結果、行列もどんどん伸びていったと言えるだろう。

 老舗グルメのブランド力。何十年、何百年を経て築いてきたその力の前には、太刀打ちしようがない。ほとんどの経営者は、やっかみ半分、あきらめ半分でこう考えるだろう。だが、矢場とんが真のブランド力を身につけたのは、創業50余年の歴史の中で、21世紀に入ってからのこと。「老舗」という看板は、単に歳月の積み重ねではなく、思い切ったビジネス・イノベーション(経営革新)を礎に築き上げられるものなのだ。今や揺るぎない矢場とんブランドは、ご当地グルメの老舗のあり方をあらためて思い知らせてくれる。