ひつまぶしを徹底解剖!

「いば昇」のひつまぶし

創業100年以上の老舗「いば昇」のひつまぶし

ひつまぶし言わずと知れた名古屋最強のご当地グルメ「ひつまぶし」。その知名度は最早全国区だ。「おひつ」のご飯の上に、ひと口サイズに刻んだうなぎの蒲焼きを文字通り「まぶす」ようにのせる事からその名が付けられたのだとか。発祥には諸説あり、一説には、明治の時代あまりにもうなぎの蒲焼きの出前が多くなり、そこで大勢で分けて食べられるように細かく切り、さらに運ぶ際に食器が割れないよう「おひつ」にご飯を詰め、その上に刻んだうなぎをまぶして出した事が始まりとも言われている。だがなにせ100年以上もの歴史があるので、今となってはその真偽は定かでない。

そのひつまぶしの老舗が、明治から100年以上も続くという「いば昇(中区栄)」である。数あるひつまぶしを扱う店の中でも、これほどの歴史を持つ店は少ない。長い間受け継がれて来たその「老舗の味」で、多数のファンを持つ名店である。創業当時は武平町(今の芸術文化センターがあるあたり)に店を構えており、意外にも当初は「ひつまぶし」を扱っていなかったという。戦時中に当時の店舗が戦災にあい、その中からなんとか持ち出した秘伝のタレを便りに、戦後、現在の中区栄で再出発を果たした。ひつまぶしを始めたのはその戦後からだが、戦災の中から持ち出した秘伝のタレから生み出される味は、今では看板メニューとなっている。そのような「伝説」のあるひつまぶしとは、いったいどんな味がするのだろうか。

「いば昇」レポート 2010年3月某日

看板 栄のプリンセス大通をナディアパークの方面へ歩いて行くと、左手に見えてくるのが「いば昇」である。細い道を1歩入った所にあるので、見落とさないように要注意。ちなみに、ナナメ向かいには「いかがわしい」お店が並んでいるので、あらかじめ覚悟しておこう。

店内の様子非常に歴史を感じさせる店構えである事が、「昨日今日できた店とはひと味違う」と感じさせる。覚悟を決め、引き戸をガラリと開けて中へ。まだ11時とあって、店内は意外と空いている、そして広い。お話を聞いた所、2階にはお座敷もあり、団体客の予約もあるのだとか。

お釜失礼して4人席に1人で座らせてもらい、早速ひつまぶしを注文する、2500円なり。「注文を受けてからお釜でご飯を炊くので、少し時間がかかるんですよ」と店員さん。それでは手間が大変だろうと思うのだが、それが拘りなのだと言う、ここには“電子ジャー”なるものは一切存在しない。使用するお米はコシヒカリやひとめぼれなど様々なものを仕入れ、独自にブレンドをするのだとか「時期によって新米は固くなったりしますから、その都度一番美味しいごはんを出せるように、お米の配合は常に変えています」。また、肝心要のうなぎは「国産の養殖で良いものを、その都度仕入れています。養殖でも、今は良いものがたくさんありますから」との事。それを秘伝のタレに付け炭火で焼く…これはタマランと思ったそばから待望のひつまぶしが登場!

ひつまぶし 炊きたてホクホクのご飯と、そのご飯が見えないほどにうなぎが「まぶされて」いて、実に旨そう。ところで、ひつまぶしって食べ方があるんですよね?「まずは、おひつの中でごはんとうなぎを混ぜます。この時うなぎの形が崩れない程度に混ぜるのがポイント。1杯目は普通に茶碗によそって食べ、2杯目は薬味をのせて食べ、3杯目は薬味と“おだし”をかけて食べます。4杯目はお好きな方法で食べて頂くんですが、私のお勧めはわさびだけをのせて食べる方法。美味しいですよ」なるほど、ではそのように。

ひつまぶし1杯目、ほかほかのご飯に焼きたてのうなぎ、タレの味もあいまってなんとも香ばしく、これだけで充分幸せじゃないか!と思ったが、お楽しみはこれからなのだ。2杯目、ねぎとわさびをのせてパクリ。シャキシャキのねぎとピリっとしたわさびの爽やかな風味+タレの甘みで、1杯目とまるで違った旨味。これ最高!3杯目、薬味+おだしをかける。おだし+薬味+うなぎ+タレ+ごはんの組み合わせって、もしかして最強!?ズルズルズルッと、息継ぎもせずに「飲み込んで」しまうほど。そして最後に、店員さんお勧めの「わさびのせ」を頂く。わさびの辛みが適度に効いて、これまた「締め」の1杯にはピッタリ。非常においしゅうございました。ごちそうさま。ふぅ。

■名古屋の“粋”がここにある!?

いば昇というお店で感じたのは、まるで「食べる物が美味しければ、それでいい」とでも言っている様な、下町感覚あふれる“粋”である。店内は歴史を感じさせる作りだが、それは「気取った」感じというのではなく、「誰もが気軽に立ち寄れる町の食堂」とでも言うような佇まいだ。実際、2階のお座敷席などはまるで「おばあちゃんの家に遊びに来た」かのような印象を受ける。有名人や全国各地からのお客さんも多いと言うが、誰でも分け隔てなく横並びに席に座り、旨いものを食う、実にシンプル。訪れたのはまだ昼前だったのだが、「フラリと立ち寄った」という感じのおじいちゃんは席に着くなり「お酒と長焼き」と注文していた。昼前から旨いうなぎを肴にお酒を一献…実に“粋”である。こんな都会のど真ん中に「名古屋の粋」を感じさせる場所があったとは。肩肘張らずに、自由に旨いものを楽しみたい方に、是非お勧めしたい「ご当地グルメ」である。