手羽先を徹底解剖!

名古屋メシのベスト3に入る手羽先

元祖か?世界か?手羽先抗争の覇者は?

手羽先名古屋メシの中でも、全国で聞いてみてベスト3には入るのが「手羽先」だ。 ここで言う手羽先はふっくらと焼き上げたものではなく、手羽のから揚げと呼ばれるものだ。 名古屋でいうそれは、しっかりとタレに浸け込んだ、スパイシーでジューシィな、独特の味わいが特徴だ。 名古屋における手羽先から揚げの発祥は、「風来坊」というチェーン店によるものとされている。 そのため、同店の看板には「元祖」の文字が堂々と記されている。
全国的にみて、どちらかと言うと有名なのは、その”元祖”ではなく、「世界の山ちゃん」である。 どちらも名古屋では有名だが、戦略の違いから全国的には知名度は山ちゃんの方が若干高いようだ。
どこかで聞いたような話だと考えてみると、ういろうの項でも同様の戦略的な違いがあるものの、競合しながら切磋琢磨される話を取り上げたことを思い出した。 ビジネスの発展には競合が必要だということは間違いがないようだ。 競合する中で独自の路線を見出していくことが、名古屋流生存のためのビジネスの基本なのだろう。

手羽からブームはどこから生まれたのか?

鶏もも焼き元祖と呼ばれる風来坊の店主(現会長)の大坪健庫氏が最初に飛ばしたヒットが手羽先のから揚げだったわけではない。 九州男児の大坪氏が名古屋で開店した小さなお店でのヒット商品は、ターザン焼きと呼ばれる鶏の半身をまる揚げにしたものが最初のヒットだった。 まずは鮮やかなライナー性のヒットと言っていいターザン焼きだが、この商品の肝となったのが「秘伝のタレ」であり、実はこれが後になって空前の大ヒット商品となる手羽先のから揚げを産むことになる。
きっかけは、仕入れ先に山積みにされていた手羽先。 それを見た瞬間に、大坪氏の脳裏に何かが閃いたという話は何度か新聞や雑誌で見たことがある。 当時の手羽先は、スープの材料程度にしか扱われておらず、「食べるもの」としての認識が薄かったのだという。 ましてや「おいしいもの」という認識などかけらもなかったのだから、それは”天啓”と言ってもいいかも知れない。 ビジネスチャンスは閃きが必要だが、そこには伏線が必ずある。 風来坊の場合は、ターザン焼きで好評を得ていたタレの存在があった。 その自慢のタレをもっと生かせないものかという思考が常にあったことが重要だ。 そして、実は看板メニューのはずのターザン焼きもそのボリューム感が仇となって、すべての客に受け容れられるものとなっていなかったという事実も重要な要素だ。 経営の現状打開のための得策として、手羽先から揚げは誕生したのだという側面は見逃せない。 小さいサイズのものは大勢で分けて食べられるし、手ごろ感とお値打ち感、そして今までに食べたことがないオリジナルな味が大ヒットへと繋がったのである。 ただ、一部では、実は大坪氏がターザン焼き用の鶏肉を仕入れ忘れたため、苦肉の策として手羽先を使ったという説もある。 しかし、それにしたところで、ヒットしてしまえば怪我の功名であり、成功譚として伝えられるわけで、勝てば官軍の法則である。

サラリーマン酒場という立ち位置を変えない風来坊

手羽先 当然ヒット商品は模倣される運命にあり、次々と類似品を出す店が増えた。 「瞬く間に」という言葉どおり、一気に手羽先のから揚げを出す店が増えていき、今では学校給食で供されることもあるほどのソウルフードとして地位を確立している。 いろいろな店が出している「通称・手羽から」は、それぞれに独特の味わいがあり、どこの味が好きかは個人の好みによる。 そこで今回は、元祖でもあり、タレが命であると主張する風来坊に行ってみた。 テレビコマーシャルでも「毎日お仕事ご苦労様です。今日も近くの風来坊へお越しください」と会長自らが訴えている内容どおり、ターゲットは勤め人であり、サラリーマン酒場としての傾向が強い。 店内の装飾をみても、余計な飾り気はなく、そのあたり一本筋が通っている。 こうした特定の対象者を狙う店は、ターゲットを見誤るような愚行があってはならないのだ。
早速注文したのは、手羽先から揚げ、そして鶏のもも焼き。 「おいおい、何故ターザン焼きじゃないの?」と思われるかも知れないが、通は両方注文したりしないのである。 使っているタレは同じなので、両方食べるととても飽きるのだ。 どちらも久しぶりに食べたが、初めて食べたような新鮮な驚きが得られたのが不思議だった。 さすが味に自信があるというだけのことはある。 知人に聞いても、「味は風来坊が一番」という声が多いのも頷ける。 サラリーマン酒場だから、低価格設定と品揃えが豊富であることが絶対条件。 鶏料理以外にも、一品料理から魚介類刺身やごはんものまで豊富なラインアップで、毎日来ても飽きない仕掛けはできている。 注文もこちらが欲しいときに寄ってきてくれるのでストレスなく楽しめた。 さりげなく痒いところに手が届くサービスぶりに好感が持てた。