小倉トーストを徹底解剖!

名古屋ご当地グルメのひとつ

いったい小倉トーストとは何か?

小倉トースト「小倉トースト」は、今では一般に「名古屋めし」のひとつとして世間に知られている。 しかし、その小倉トーストは、当の名古屋市民でさえよく理解されていないもののひとつでもあるのだ。 というのは、その定義が定まっていない点が問題らしく、呼称ですら「小倉トースト」、「小倉サンド」、「あんトースト」などとさまざまであり、同じものであるはずの「小倉…」を頼んでも、レシピも見た目も違うものが店ごとに供されてくるような次第なのだ。 基本形としては、バターかマーガリンを塗ったトーストに、たっぷりの小倉あん(つぶ餡である)を載せたもの、トーストで挟むタイプもある。 食べた経験がないと、「ミスマッチな組み合わせ」と判断されることから進んで食べようとする人は少ない。 しかし食してみれば、塩味と甘みが微妙に引き立てあい、「思った以上においしい」という意見がビギナーの多くから聞かれる。 音楽で言えば、クラシックとロックの融合であり、絵画であれば、西洋画と日本画の合体のようなもの。 この絶妙なバランス感覚、危うげな味のハーモニーはどのようにして生まれたのか、それを知りたくなる。

小倉トースト誕生の背景とは?

小倉トースト一体、誰がこんな食べ物を考えたのか、それを知るには、名古屋の喫茶店の殆どの店舗で出されていることから、喫茶店文化をたどるしかないと考えた我々調査隊は、そうした文献を読み漁ってみた。 どうやら昭和30年代から徐々に広がり、次第に名古屋のどこの喫茶店でも供されるほどの定番メニューに浸透していったらしい。 名古屋が城下町であり、元々お茶文化が盛んな地域だったこと、和菓子店も多かったことなどがそもそもの背景ではないかと仮説を立ててみた。 ところで、小倉トースト発祥の店、考案者はどこの誰なのか? 人づてに尋ね歩くと、若宮神社近くの『満つ葉(まつば)』ではないかという意見が最も多かった。 中区栄にあったその店は、実はもう存在せず、店主西脇さんもすでに他界されているらしい。 西脇さんの祖父母が大須で製あん業を営んでいたようで、両親が現・栄三越前に喫茶店「満つ葉」を開業し、ぜんざいが人気商品だったそうだ。 肝心のトースト登場は大正10年ごろというから思ったよりかなり前だった。 ハイカラブームから店でもバタートーストを出し始めたところ、現・名古屋大である旧制八高の学生たちが、トーストをぜんざいに浸けて食べるのを好んでいたそうで、それに気付いた母親があんをトーストに挟んだのが始まりというのが真相のようで、当時の呼び名は「あんトースト」だったらしい。

小倉トーストは、なぜ全国区にならないのか?

小倉トースト今でも時々、コンビニエンスストアで「小倉トースト」や「小倉サンド」なるものが売られているのを見る。 しかし、これは絶対的に愛知県又は隣接県のみ。 菓子パンとしては、「小倉&ネオマーガリン」なる商品が敷島製パン(名古屋市東区)で製造され大変な人気となっているが、これまた全国区ではない。 そもそもトーストではないのだが、小倉つながりで同様の商品と考えていいはず。 1日6万7000本もの生産が続くロングセラー商品であり、子供から大人まで広く愛されている。 1975年にパン製造担当者たちの間でブームになっていたのが、焼きたてのあんパンにマーガリンを塗って食べること。 あまりの人気から、これを商品化しようとなったわけだが、味わいとしてはほぼ同様。 「通称・小倉ネオ」は、中部と関西の限定商品で、売り上げの8割は中部圏内。 実は関東でも売られた経緯があったが、すでに販売中止となっている。 これを単に「名古屋市民はあん好きだ」ととらえるのは早計だが、餡文化は否定できないものでもある。 ただ、お手軽なため、名古屋出張の土産品として重宝されているという情報が多い。 確かに他の土産物より気軽に渡せるし、”お値打ち”だ。

小倉トーストを食してみる

小倉トースト 敷島製の小倉ネオは今でも常時コンビニ・スーパーに置かれて、かなりの人気商品である。 ただ、これを子供の頃から食べて育った大人たちは、「小倉&マーガリン」の味を小倉トーストの味と脳内に刷り込まれていて、それ以前の世代とは一線を画しているのが実情だ。 実は小倉トースト(及びサンド)は常に進化していて、小倉&クリームや、小倉&チーズなど新たな切り口での商品化が続けられている、発展途上にある商品なのだ。 そこで、今回は比較的オーソドックスな小倉トーストを食べに出かけた。 東区筒井商店街にある「喫茶フレンド」は食べ物が充実した、名古屋メシの博物館みたいな店だ。 間口から受ける印象とは違い、店内はだだっ広い。 朝のモーニングに始まり、ランチ、そして夜の10時まで食事ができるため、どの時間帯に行っても来店客でにぎわい、名古屋市民に愛され続ける名店である。 小倉トーストはパン2枚分につぶ餡がギッシリつまって400円。 ジャムトーストと同額であり、これだけでかなりの満腹感が味わえる。 ここの小倉トーストは、実にオーソドックスなレシピで飽きは来ないが、確かに小倉ネオを食べ慣れている世代には、「もっとマーガリンたっぷり」と言いたくなるかも知れないなと感じた。 それでも、この店で出される小倉トーストが以前から全く変わらないレシピで愛されているのは、「これがうちの味」というこだわりと自信があるからなのだろうと思う。 店ごと、職人さんごとのこだわり、これは”ものづくり”にこだわる名古屋の各文化、さらにはビジネスにも共通することかも知れないと感じた。